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英語の発表を聴くコツ

みなさんは、英語の学会発表やセミナー発表を聴いた時、思うように理解することができず、苦労した経験はないだろうか。ネイティブや帰国子女ならばまだしも、そうでない場合はどうするのか。これは日本ベースの人文・社会科学の研究者が国際化に対応する(もしくはせざるを得ない)場合に避けては通れない共通課題の一つかもしれない。経済学などは英語が共通語として普及している反面、社会学、歴史学などでは日本語と西洋言語の両方が必要になる事もおおく、また外国語も英語一本絞られる必然性もない都合上、「国際化」といってそう一筋縄ではいかない事情がありそうだ。
僕自身はと言うと、学部3年になるまでは海外といえば旅行で数日程度だったので、学部卒業後に留学するなりかなり苦労した(その苦労の一端については、以前TEDx yzというイベントで話したことがあった)。最近、発表を聴くコツは?という質問を目にしたので、自分の場合の経験を思い出せる範囲で共有してみたい。
【分からないのは相手のせいかもしれない】
隣の芝は青くみえるものだ。ネイティブでないと、議論が分からないのは自分のリスニングのせいだと思ってしまいがちだ。(少なくとも自分はそういう思い込みに随分苦しまされた。)けれど、ネイティブの専門家でも100%分かるなんてことはまずない。そもそも内容が完璧でないwork-in-progressを発表することも多い学会やセミナーでは、内容も発展途中であることがおおい。だから「議論についていかれないのは自分のせいだ」という感覚からまずは距離をとろう。それだけでも楽になるかもしれない。場所によっては、発表の途中で挙手をしたりして事実を確認したり出来る場合もある。その場合は積極的に確認をするとよいだろう。
【重要な論点と議論の構造を大づかみにしよう】
ディテールも大事だが、各論がどういうglobal argumentを支えているのかを把握するように(自分の場合は)心がけている。そもそも発表はどのようなエビデンスで、先行研究とどのような差異化をはかっているのだろう? 良い発表はこうした発表者としての意図を直接・間接に上手く伝えてくれる発表にちがいない。 それが上手く伝わってこない場合は質問をしてもう一度説明してもらうと良いだろう。 聴いている言語でメモをとると、よいような気がするが、これについては個人差もあるかもしれない。
以上の論点は個別的なコツと言えるものだが、以下は、どちらかというと日頃の環境づくりについて。
結局「外国語で発表を聴くコツ」というのはそれほど多くなく、結局は日頃の環境づくりや創意工夫が、中長期的に違いを生み出すような気がしている。そんな感覚をもとに、以下のポイントを列挙してみたい。
【普段からターゲットの言語に身をさらそう】
僕の経験では、留学前はひたすら英語のラジオを聴いていた。最近であればフランス語のラジオを流して作業などをしていることも多い。電車などで聴いたフレーズを口走ったり(シャードイングというらしい)すると、たしかに怪しい人にはみえてしまうけれど、そうすることで、耳も慣れてくるし、いずれは発音もこなれてくるかもしれない。 些末なことかもしれないけれど、普段からこういう環境を作っておくことで、いざセミナーに行った時に相手の行っていることが半分近く分からなくても、「それは相手のせいもあるのだろう」くらいの図々しさや度胸で質問できたりするような気もする。
日頃の工夫によってえられるちょっとした環境の変化は、実は色々ところでプラスに働くのかもしれない。それは英語の発表を聴く場合にも言えることだろう。
【色々なセミナーに行ってみよう】
自分の研究と直結するセミナー以外は行かない、そもそも忙しいのだ、、という人も多いのではないだろうか。私見だが、関係性の低そうなものでも、日頃からなるべくアンテナは広めに張っておくと、研究者としての幅が広がると思う。特に若いうちは(自分もそうだけれど)、自分の領域を限定しないで知見を広めるのがよいだろう。そのような余裕やエネルギーは、後になればなるほど捻出が難しくなるはずだ。研究のすそ野が狭いまま、忙しい専任職についた場合、おそらくは新しい研究を進める余力をみつけるのは難しく、似たようなテーマの縮小再生産を余儀なくされる場合すらあるかもしれない。 教育プロバイダとしてはまだしも、研究者としては避けるべきあり方ではないだろうか。
出来るだけ多様なセミナーや国際シンポジウムを覗いてみること。例えば留学中などは気に入ったセミナーには足繁くかよって「レギュラー」になることも、やはり英語議論についていけるようにするための一つの方法だと思う。
【セミナーに行ったら質問をしよう】
僕が行くような分野の日本のセミナーでは、質疑になると「大御所」が最初から話しつづけ、特に院生は黙っていて休憩時間にようやく質問をしはじめるのを目にすることもある。TPOにもよるけれど、若手が元気よく活躍しない分野は、斜陽産業になってしまうのではないだろうか。それでは参加している院生も時間ももったいないだろうし、積極的に発言をしてみてほしい。また研究会の主催者や司会には、ぜひとも院生および若手全般の積極的な発言を促してほしい。英語圏では、発言をすることで、はじめてセミナーや学会に貢献したと見なされる場合もある。日頃から積極的な姿勢を持つようにするとよいのではないだろうか。 ただ、慣れない文脈で質問をするのは当然緊張する。僕がヨークで院生をしていた時は、(特に博士課程に入ってからは)出来るだけ毎週外部スピーカーのくるセミナーに出席し、出席したら必ず質問をするようにしていたけれど、口の中が乾き、心臓がバクバクしていたのを覚えている。当時は、水を持っていって、沢山飲んで落ち着こうとして、途中でトイレに行きたくなってよく挙動不審になっていたけれど、それも今となっては思い出の一つだ。いまなら、ハンカチにエッセンシャルオイルをたらして、その香りで落ち着こうとするだろうと思う。
100%理解することなんて出来ない、ということを書いたけれど、発想を逆転すれば、有意義と思える質問を出来る程度に聴けていれば「とりあえずは、十分」と考えることも出来る。
そうすると、「では有意義な質問とは何か?」という問題がでてくることになるけれど、これはこれで面白い問題なので、また余力があったらポストを書いてみたいと思う。
【自分のやり方をみつけよう】
以上は、僕の個人的経験をもとに書いたものにすぎない。それぞれが試行錯誤するなかで自分のスタイルを身につけていくのが良いのではないだろうか。 こんなコツや考え方もあるぞ、という方は教えてください。